オルタネーターの容量アップとは?

オルタネーターとは簡単に言えば発電機です。このオルタネーターは容量アップをすることができます。社外品・純正流用など方法はいろいろあります。筆者も容量アップオルタネーターの持込取り付け依頼を受けたことがあります。ここでは「容量アップの目的や、よく聞かれること」について解説していきます。

電力供給のメインはオルタネーター

バッテリーはあくまで補助

オルタネーター役割を簡単におさらいしてみます。「エンジン始動時にセルモーターを回すとき」「エンジンを始動させずにキーをACC位置でナビやオーディオを使用したとき」「オルタネーターの発電量を上回る電力需要が発生したとき」などはバッテリーより電力が供給されます。そのバッテリーの減った電力を充電するのがオルタネーターです。ですが意外なことに、エンジン始動中は主にオルタネーターより電力が供給されています。エアコン・灯火類・オーディオなどをOFFにしておけば、アイドリング状態でもバッテリーを充電することができるほど、自動車のオルタネーターは優れているのです。ですが最近の過熱した燃費競争に勝利すべく、自動車メーカー各社は車両各部でとことん低抵抗を追及しています。オルタネーターも例外なくその対象で、以前より発電量に余裕を持たせない傾向にありますので、オルタネーターの容量アップが近年より注目されています。

なぜ容量アップなのか

さきほど自動車のオルタネーターは優れていると説明しました。「それじゃあ容量アップの必要は無いでしょ」と思われるのではないでしょうか。ノーマルのままでお車を乗られている限りは電力の需要と供給のバランスがとれていますので必要は無いかもしれません。そのバランスが崩れて需要が増大したらどうでしょうか?バッテリーの負担は増すと考えられます。それはどんなお車でしょうか。良い例になるのが「キャンピングカー」です。エンジン停止時でも、室内照明や電子レンジ、暖房などを利用するためにサブバッテリーを搭載するのが常道です。このサブバッテリーに充電するのもオルタネーターの役割です。こういったように電装品や電気製品をよく利用するお車には、容量アップは有効な手段になります。筆者が扱ったことがある他のケースでは、カーオーディオにものすごくこだわったお客様です。バッテリーの充電済み容量を極力安定させることにより、最近のお車で採用されている発電電圧可変制御システムによる電圧変動をオーディオシステムが受けにくくしたいとの要望でした。こういった様々な目的でオルタネーターの容量アップが用いられています。

容量アップをすると燃費が悪くなる?


よく「燃費が悪くなりますよね?」と聞かれることがあります。でもそれは間違いです。純正品と同じく低抵抗のまま容量アップができます。それはなぜなのでしょうか?車両の消費電力はナビや灯火、ECUやプラグの点火など電気を使う全ての電装品で決まります。オルタネーターの最大発電量を大きくしたからといって、電装品の電力消費が増えるわけではありません。「バッテリーに充電する電流が大きくなるじゃないか」といった疑問もあると思いますが、心配無用です。理由はバッテリーが満充電になれば、オルタネーターからの充電は止まりますし、バッテリーの容量の大小に関係無く、充電するときの電圧は、バッテリー保護のため上限は一定であり変化することはありません。オルタネーターが発電している時間を考えると、容量アップしたオルタネーターを用いる方が、ノーマルのオルタネーターより発生電流が大きいので早くバッテリーの充電が終えられると考えられます。単純に「バッテリーを充電している=抵抗が発生している」とした場合は、早く充電を終えられる容量アップオルタネーターの方が低抵抗ではないでしょうか。ただし、品質があまり良くない容量アップオルタネーターですと、使用されているベアリングのグレードや摺動部の品質が低かったりします。そうなるとオルタネーター単体が持つ抵抗は、純正品と比較すると大きくなってしまい、抵抗の増大になりかねませんので注意が必要です。

容量アップのデメリットは?


ここまでメリットばかり上げてきましたが、デメリットももちろん存在します。それは主に修理のときです。交換後に何らかの不具合が発生し修理をするとき、筆者が勤めていたディーラーだと、オルタネーターの不具合発生時のほぼ100%は、電装品専門店にオーバーホールを外注するか、リビルトパーツ等へ交換していました。修理依頼時にユーザー自らが容量アップ品であることを伝えないと、新車装着品と同じ容量のオルタネーターを用いて修理される可能性があります。また社外品のオルタネーターだと、その製品の修理に必要なデータを持っていないので修理自体を断られる可能性もあります。では「修理くらい自分でやれるというDIY派の人」はどうでしょうか?純正品ならオルタネーターの不具合箇所さえ特定できれば、パーツリストで部品番号を調べて補修部品を入手して修理をするでしょう。でも社外品や純正品ベースの容量アップオルタネーターだと、「そのパーツリストは公開してくれますか?」「細かな部品単体で入手できますか?」「本体丸ごと(Assy)でしか売ってくれなかった」なんてことになると修理のハードルが一気に上昇します。容量アップオルタネーターは純正品のリビルトパーツの2~3倍の値段の物も見受けられます。脱着工賃も含めると費用は意外に高いと感じるかもしれません。決して安くはない買い物になりますので、購入時から修理の際に容易に対処できる体制が整っているかどうかを確認することをオススメします。

容量アップの方法とは

意外と知られていない寒冷地仕様品

社外品や純正品をベースにした容量アップオルタネーターを入手する方法が一般的だと思います。社外品でもアフターサービスでオーバーホールメニューが提供されているような、手厚いサポート体制の製品なら心配いらないでしょう。でもやっぱり「ディーラーに全部任せたいから・・・」などと尻込みしてしまう気持ちもわかります。そんな人に考えてもらいたいのが「寒冷地仕様車のオルタネーター」です。トヨタ車を例にすると寒冷地仕様というメーカーオプションが存在します。北海道地区ではそれが標準になりますが、それ以外の地区では寒冷地仕様のメーカーオプションを選択しなければ標準仕様車となります。ただし寒冷地仕様でもオルタネーターの容量が標準と変わらない場合や、寒冷地仕様が存在しないホンダ車ではできませんのでご注意ください。筆者の知っている車種では標準が110Aで寒冷地仕様が130Aのように、オルタネーターの容量がことなるケースがあります。これから車を購入するのなら、この寒冷地仕様を選択すれば標準より大きな容量のオルタネーターが装着されます。既にお車をお持ちでも、寒冷地仕様のオルタネーターは単体購入できますし、そのリビルトパーツなんかを入手するのも良い選択ではないでしょうか。

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ライター@1031

元国産車メーカーのディーラーサービスマンを経て、現在は埼玉県にて独立。鈑金塗装を中心にカーメンテナンス全般を行っています。修理や取付け交換はもちろん、ユーザー車検の付添いから部品交換の補助なんてことまで幅広く対応しております。

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