自分でオルタネーターを交換するには

自分で交換作業をして工賃節約を考える人はとても多くいらっしゃると思います。それはインターネットでリビルトパーツが簡単に入手できるようになった昨今では安く愛車を修理できる方法の一つです。そんなオルタネーターの交換についてご紹介していきます。どんな作業なのかを知れば「あの見積もりの作業工賃にやっぱり納得!」なんて考えが変わるかもしれません。

オルタネーター交換のタイミングとその症状

故障時期は走行距離では一概に判断できません

筆者がディーラーに勤務していた時は1か月に2~3台ほど、オルタネーターが故障したお車が入庫していました。オルタネーターの故障は決して珍しいことではありません。走行距離に着目してみると7万キロでオルタネーター内のICレギュレーターが故障したケースがあります。逆に筆者が昔乗っていた愛車のように、20万キロでやっと故障したというケースもありますので走行距離だけでは一概に判断し難いです。一般的には10万キロがオーバーホールのタイミングなんて言われていますが、それはあくまでも予防修理の目安で実際の故障のタイミングとは異なります。

不具合発生時の症状とは

オルタネーターが全く発電しなくなればメーター内の充電警告灯が点灯するのでオルタネーター故障と判断し易いです。しかし電圧が低いながらも発電できている場合は厄介で、バッテリーの交換時期と勘違いされてしまうことがあります。20万キロでオルタネーターが故障した筆者の例では、アイドリングか走行中を問わずエンジンがかかっているときは、エンジン回転数が100回転くらい上下に安定せず、それに比例して夜間にインパネ照明や灯火類が明るくなったり暗くなったりを繰り返していました。このように走行距離と同じく症状もケースバイケースですので、故障診断は先入観を捨てて行いましょう。

守っていただきたい注意点

これからオルタネーターの交換手順をご紹介しますが、車種により手順や、ジャッキアップの要否、取り外しが必要なボルト類やパーツが異なりますので、あくまでも作業例としてイメージをつかむためにご覧ください。交換はディーラーや自動車整備(修理)工場へ依頼しましょう。それでもご自分で交換にチャレンジされるのでしたらサービスマニュアルに従うなど細心の注意が必要です。自分でいじって壊してしまったとしても、何かトラブルが発生したとしても全が自己責任になります。やっぱり無理そうだと感じたら、プロに任せましょう。今回、交換手順の例に用いる車は最近主流のベルトが1本(1本のベルトでウォーターポンプ・オルタネーター・コンプレッサーのプーリーを駆動している)のお車になります。

オルタネーターの取り外し手順

バッテリーマイナス端子を外す


とても重要な作業です!時計やナビの設定がリセットされるからといって横着してはいけません。バッテリーマイナス端子を外さないと今回の作業では火花が出たり、車両が燃えることがあります。また車両によってはイグニッションOFFの後、バッテリーマイナス端子の取り外しまでの待ち時間が規定されていますのでサービスマニュアルに従いましょう。

Vベルトを外します


<オートテンショナーの場合>
テンショナーを固定しているボルトにメガネレンチなどをかけて、ボルトの閉まる方向へ力を加えて動かします。写真はハイエースでの例です。この場合は時計回り方向へ力を加えればテンショナーが移動してVベルトのテンションが緩みます。この力をかけているときだけVベルトに掛かるテンションがフリーになりますのでVベルトを外すことができます。テンショナーには強い力が掛かっていますのでロングメガネレンチを使わないと動かせないことがあります。Vベルト取り外し後のテンショナーはバネの力により思いもよらない位置まで移動しますので手を挟まれないように注意が必要です。

<アジャスティングボルトによる手動調整の場合>
オルタネーターの取り付け位置をずらすことによりVベルトの張力を変えています。アジャスティングボルトおよびオルタネーターを車両に取り付けているボルトを緩めることによりオルタネーターをずらして、Vベルトに掛かるテンションをフリーにすればVベルトが外せます。作業前にアジャスティングボルトのどの位置にナットがあるのかをマーキングしておけば取り付け時の張力調整の目安になります。ナットが無いタイプならボルトの残り代を記録しておきましょう。また張力調整を自分で行う必要があるのでVベルトを押したり引いたりしたときのたわみ量も覚えておきましょう。

オルタネーターと車両配線を切り離しましょう

オルタネーターにボルト止めして接続されている太い配線がありますので外します。これをB端子と呼びます。Bはバッテリーの頭文字です。B端子はバッテリーのプラスと接続されていますので、手順1を行わないとバッテリーのプラスとマイナスが短絡してしまいます。この短絡はECUやカーナビの破損原因となります。短絡により発生した熱で工具と車両が溶着してしまい即座に取り外せなくなり車両火災になったケースもありますので要注意です。その他オルタネーターに接続されているカプラーも全て外します。

オルタネーターを取り外します


乗用車のオルタネーターを固定しているボルトの数は車種によりますが、写真の赤い矢印の2箇所で固定されていることが多いです。写真はGB1型ホンダモビリオのオルタネーターです。このボルトを外せばオルタネーターがフリーとなり取り外すことができます。エンジンルームが狭く作業スペースが無い場合は、干渉するパーツやブラケットを外す必要があります。コンプレッサーやLLC、パワステのリザーブタンクを外したり、ずらしたりしないといけない車種もあります。

取り外したオルタネーターには長持ちさせるヒントが隠れています

是非取り外したオルタネーターを観察してみてください。交換した新しいオルタネーターを長持ちさせるヒントが隠れていたりします。滲んだエンジンオイルなどの油脂類やLLCが付着していませんか?内部に入り込みカーボンブラシの溶損、固着の原因になりますので、滲みや漏れは修理しましょう。オルタネーターにVベルトの黒い削りカスが付着していたり、プーリーが黄金色に変色していたりすると、Vベルトがスリップしていた可能性があります。この場合はVベルトの寿命か、張力調整が適切でなかった可能性があります。B端子や丸型端子に変形が無く両者が面で接触していたか確認しましょう。面接触になっていないと発熱から始まり最悪車両火災の原因になります。車両側、オルタネーター側共にカプラーや端子に焦げや溶損など異常が無いか確認しましょう。

オルタネーターの取り付け作業

取り付けは取り外しとは逆の手順で行いますので、戸惑いがちなポイントについて解説していきます。

オートテンショナーのVベルトの取り付け

オートテンショナー車のVベルトの装着は、片手でオートテンショナーをレンチなどで緩めたまま、もう片方の手でVベルトを掛けます。これには慣れが必要で、Vベルト周辺が狭い車種では苦戦するかもしれません。おすすめの作業方法は二人で作業を行うことです。一人がテンショナーを緩めてもう一人がVベルトを掛ければ比較的楽に行えます。Vベルトが装着できれば張力は自動調整ですのでオートテンショナー車は作業完了です。

アジャヤスティングボルトタイプの張力調整

このタイプのお車は、取り外し時にアジャヤスティングボルトを緩めてありますのでVベルトの装着は、オートテンショナー車と比べ簡単に行えます。しかし張力調整は自分で行わなければならず、感覚に頼る面もありますので、じっくり落ち着いて行いましょう。取り外し作業前にアジャスティングボルトにつけたマーキングや、Vベルトを押したり引いたりしたときのたわみ量の感覚も参考に行います。たわみ量やその測定ポイントは車種ごとに違いますのでサービスマニュアルに従ってください。張力が強すぎるとVベルトが掛かっている各プーリーの軸を痛めたり異音が出たりする原因になりますし、弱くてもスリップが起こりますので注意してください。

バッテリー復帰後の注意点

オルタネーター交換ではバッテリーのマイナス端子を外して行いました。そのためECUやカーナビ、カーオーディオなどの設定がリセットされていますので再設定が必要です。パワースライドドアやパワーウインドウの学習、アイドリング学習なども忘れずに行いましょう。

まとめ「整備工場に交換をお願いすることをお奨めします」

オルタネーター交換について、実際にどんな作業をしているのかお分かり頂けたかと思います。自分で交換をしたときは不測の事態を起こしてしまっても自己責任となりますが、整備工場に交換をお願いすればプロが責任を持って対処してくれます。「まずい!」と思ったら無理をせずに整備工場にお願いしましょう。

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ライター@1031

元国産車メーカーのディーラーサービスマンを経て、現在は埼玉県にて独立。鈑金塗装を中心にカーメンテナンス全般を行っています。修理や取付け交換はもちろん、ユーザー車検の付添いから部品交換の補助なんてことまで幅広く対応しております。

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