ターボチャージャー(以下本文中ターボ)とは、排気ガスの流れを利用しコンプレッサーを駆動させ、内燃機関へ密度の高い空気を送り込む「過給機」であり、搭載することによってエンジンは排気量以上のパワーを発揮します。
ターボは毎分20万回もの高速回転を繰り返し、高温となる過酷な環境で使用されるため、タービン・タービンシャフト・フローティングメタル・コンプレッサーホイールなどの構成部品が摩耗劣化、最終的にはブロー(故障)してしまいます。
完全にブローするとターボ一式を交換するしかないうえ、エンジン本体へ深刻なダメージを与えかねない…、そこで今回はターボが故障する原因と症状を解説したのち、修理費用やその後の注意点などにも触れていきたいと思います。
パワーが出ない!ターボチャージャーが故障する原因とは
過酷な駆動条件が宿命付けられているターボは、他のパーツより頑丈に作られており、特別な外的要因がない限り「年単位」で摩耗・劣化するため、購入して一度もはっきりとした症状が出ないこともあります。
特に、「速く走ること」を目的にしていた90年代前半頃までのスポーツカーはともかく、「エンジンの小型化や軽量化」を目的に、近年のモデルに採用されているダウンサイジングターボは、メンテナンスさえサボらなければブローしにくい傾向にあります。
しかしメンテナンスを怠ったり、古いスポーツカーを中古購入した際には、ターボが不具合を起こしパワー不足を感じたり、ブローしてしまう可能性も高まってきます。具体的にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
ケース1 エンジンオイルの汚れとゴミ混入
まず最初にターボが不具合を起こしてしまう原因として最も多いのが、オイルの残留スラッジや混入したゴミが、ターボシャフトの軸受け部やベアリングの表面に傷をつけ、クリアランス不良やベアリングの異常摩耗を引き起こすことがあります。
若干パワー不足が感じられる以外は主だった初期症状はありませんが、悪化するとターボ作動時にカラカラ音が聞こえることが稀にありますが、こうなるとシャフト及びベアリングを交換するしか手がないうえ、焼き付きを起こした場合はASSY交換確定です。
症状が出ないまま、突然ターボがブローするケースもあるので厄介ですが、エンジンオイルとエレメントの交換を適切に実施してさえいれば、かなりの確率で予防することができます。
ケース2 エンジンオイル供給不足による油幕切れ
エンジンからのオイル供給が不足し油膜切れを起こすと、超高速で回転しているシャフトは瞬間的に高温になり、あっという間にベアリングと焼き付いてしまいます。
油膜切れを引き起こす主な原因は、根本であるエンジンオイル不足・劣化のほか
- オイルストレーナーの詰り
- オイルポンプ不良による油圧低下
- 排気マニホールドの高熱で形成されたスラッジによるユニオンボルトの詰り
などがあり、いずれのケースでもターボASSY及び、原因となった箇所を交換する必要があります。
こちらもすべてにおいて、有効かつ簡単な予防策となるのがエンジンオイル管理の徹底です。とにかくターボ搭載車はマメなオイル交換を心がけるとともに、粗悪な商品や粘土適性の合わないオイルの使用は、控えるようにしましょう。
ケース3 吸・排気インペラへの異物飛込
高速で回転している、吸・排気インペラへなんらかの異物が飛び込み破損すると、ローターの回転軸がアンバランスになり、結果ベアリングの焼付き・シャフト折損に至ることがあります。
吸気側の場合、インペラの取り付けナットあるいは、コンプレッサのナットが自然に緩んではずれてターボに吸い込まれたり、排気側の場合はピストン・プラグ・リングなど、エンジンの破損物が飛び込むことが主な原因となります。
ターボ取付作業時に、ワッシャーやウェスなど忘れたまま、ターボを組み上げてしまった場合も発生し、堅い大きなものなら破損が、粒の小さな砂状の場合は偏摩耗、布のような柔らかいものが吸い込まれた時は羽が変形します。
ターボチャージャーは中古品の利用やDIY交換可能なの?
新品もしくは信頼できる業者でのリビルト品購入が◎
ターボチャージャーは、前述したようにエンジンオイル管理を適切に実施し、インペラへの異物飛込という「もらい事故」が発生しなければ、20~30万km平気で稼働する丈夫で長持ちしやすいパーツです。
しかし、それは目立った症状が出ていないというだけで、年数を重ねるごとに少しづつダメージは蓄積し、見ただけではわかりにくい細かい変形などが存在するため、中古品と交換する場合は、ある日突然ブローするかわからないことを覚悟しておくべきです。
後述しますが、ターボの交換工賃は安くないため用心するならOH済であるリビルト品、値は張るものの万全を期すなら、新品へ交換したほうが無難だと考えています。
DIYは不可能ではないものの…
交換工賃が高いなら、「DIYして節約できないものか…」と考えるユーザーもいるはずで、車種にもよりますが道具を揃え安全に留意したうえであれば、作業的に全く不可能という訳ではありません。
ですが、前述した通り交換作業を進める過程でわずかな糸くず・砂などを残そうものなら、インパネの損傷に繋がりかねないため、「素人は手を出さない方が良い」と断言しておきます。
ターボチャージャーの交換費用相場
手慣れたプロなら軽自動車で約3時間、普通車なら約4時間、スポーツカーでツインターボが約5時間あたりで交換作業は終了しますから、レバレートを「8,000円」に設定した場合、
- 軽自動車・・・3×8,000=24,000円
- 普通車・・・4×8,000=32,000円
- ツインターボ車・・・5×8,000=40,000円
あたりが工賃相場となり、これにリビルト品or新品価格を加えたものが、ターボの交換費用相場となります。
リビルト品or新品へ交換後もこんな症状が出るときは要注意!
中古品は怖いから、信頼できるところで購入したリビルト品や新品に交換したにも関わらず以下のような症状が出たときは、ターボ以外の場所に原因が残されている場合があります。
出力ダウン&加速性能の改善が見られない
出力や加速性能のダウンは、ターボの異常を察知する上でわかりやすい症状の1つですが、アクチュエーターの作動不良を起こしていたり、排気バイパスバルブの固着によって排気ガス漏れが発生している場合も、ブーストが上がらず出力や加速が改善しません。また、アクチュエーターの圧力調整不良で、ブーストが上がりすぎている場合も、燃料カットによって加速が伸びません。
マフラーから白煙が出る
ほとんどの場合、マフラー内に残留したオイルが燃えているだけなので、時間が経過すれば徐々に消えます。しかし、いつまでたっても白煙が上がる場合は、ブローバイ過多によりターボのセンターハウジング内部がプラス圧力(通常はマイナス)になり、オイル漏れが発生している可能性があるので点検が必要です。
まとめ
大きなエンジントラブルになりかねない中古品は避けるべき
何年も無事に駆動してくれる、良質な中古ターボに当たる可能性は確かにあるものの、DIYが困難で工賃が最低でも2~3万円すること、さらに中古といっても専門ショップが販売する商品の場合はやはり数万円するため、ギャンブルを仕掛けるにはリスクが大きい。
また、ターボがブローすると直接エンジンへ大きな負荷がかかるため、仮に作動済みが確認されているとしても安価な中古品には、手を出すべきではないでしょう。
とはいえ、新品ターボキットになると軽自動車でも10万円弱、普通車は10万円以上確定なので何とか節約したい、そんなとき役立つのが新品並みの性能を持ちながらかなり安く入手可能なリビルト品の存在です。
もちろん、新品同様といってもリビルト品も中古パーツの一種、品質にばらつきがあるため「絶対にすぐ壊れない」とは言えませんが、もともと頑丈にできているターボの場合、高品質なリビルト品が市場に多く出回っています。
きめ細かい作業を実施する優秀なカーショップを選ぼう!
ターボは、エンジンを構成する他のパーツや電装・足回り関連より壊れにくいうえ、感覚的にはターボ車よりNA(ノンターボ)車の方が2倍近く持ち込まれるため、実は交換する機会が少ないパーツの代表格です。
結果、交換作業になれていない業者も多数存在しますから、ターボに関する知識と技術を有するカーショップを探し、作業を依頼したほうがいいでしょう。
ネットで評判をリサーチするのもアリですが、手っ取り早いのは在庫車の中にターボ車やスポーツカーが多いショップに当たること。
ディーラーより安い工賃相場で細かく、丁寧に作業してくれるところもあるので、複数軒回って話を聞きながら見積りを取り、料金や店の雰囲気を比較して依頼先を決めるようにしましょう。
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